2011/02/21

とりとめもない音楽ビジネスの話 #3


やはり久々の更新となってしまった。今回は、そもそも音楽ビジネスとは?って話からはじまるこれからの話。かも。


音楽ビジネスの起源というのに何か定義があるのかどうかは知らないのだけれど、自分としては2つの起源があると捉えている。


一つ目は村の祭りの音楽。豊年を祈る村の祭りで木や石や手を叩いたのが音楽の起源であり音楽ビジネスの起源だろう。太鼓叩きの名人は司祭やそれに準ずるような立場となり、「彼が叩けば雨が降る」とか「彼が叩けば魚の群れがやってくる」とか、ついでに「ミカンも酸っぱくならないのよ」とか何とか言われたに違いない。で、その太鼓叩きは漁は苦手だし作物を上手に育てるGreen Fingerも持たないのだけれど、村の皆から魚を、ついでにミカンを分けてもらえる訳である。つまり村にとって価値ある存在として、村から生活が保障されるいわば税金で支えられるモデル。


二つ目はパトロンに支えられた宮廷音楽。そも、宮廷音楽とは本当に宮廷の中に限られたごく一部の階級の人達の言わば個人的楽しみであったらしいのだけれど、程なくそれはブランディングの側面を持ちはじめる。王侯貴族が自分の名前を冠した曲を書かせて演奏させたり、何かの式典等で城下の民にそれを披露する機会を作ったり。「こんなに素晴らしい音楽を愛で育てている自分」つまりパトロンのブランド力アップに有用な存在として、スポンサードを受けるモデル。


その後、時代に即して形を変えてはいるものの基本的にはこの二つ。かつて私がサブスクリプションサービス(月額制の聴き放題の音楽配信)の仕事に従事し、理想のビジネスモデルを模索していた頃、一番素晴らしいと考えていたのがネットワーク課金制だ。1ファイル=◯◯円という最低限の値付けだけがあって、そこからのコピーは基本的にタダ。自分でコピーしようが、他人にコピーしようが、他人にコピーされようが、全部タダ。ただ、、、1移動=◯◯円と言う形でネットワークに課金する。100円の曲をメールで友人から送ってもらったら1円という具合。さらにこれがプロバイダ契約なり何なりのネットワーク・インフラの利用料に組み込む形に出来れば、税金のように音楽の対価を支払う新しい仕組みが出来上がる。もっとも、ネットワーク・インフラの会社が求めているのは音楽の対価の適正化なんかでは勿論ない。なんならタダでも良いから、ユーザーのインフラ利用が上がれば、自分の顧客(会員)が増えれば良いわけで、そう簡単には実現しないだろうね。


パトロンのモデルの方は徐々に変容を遂げて行き、金持ちの非常にクローズドな個人的な楽しみは小額のスポンサードをする広く一般の民衆にもオープンされる歴史を辿る。10年前であれば、レコード会社が、アーティストやそのアーティストの所属するプロダクションを金銭的に支持するパトロンのような側面を持っていたし、個人が代金を支払ってCDやライブのチケットを購入することは、この流れにあると言って良いと思う。


レコードを販売するビジネスもこの一つ。おそらく最初期、レコードなんてのは“おもしろグッズ”や“便利グッズ”の類いだったのではないだろうか。今ではレコーディングの技術が上がり、ライブミュージックではできないような表現が出来るようになっているし、そういうレコーディングプロダクトは個人的にも好物だけれど、もともとレコードはライブミュージックの複製でしかなかった。長く(特に日本の)音楽業界では、レコードビジネスが中心にあり、ライブはレコードを売るためのプロモーションと見なされることもあったし、Tシャツやポスターなどの物販とは分けてとらえられてきた。


これからは、レコード=グッズという考え方がフィットする気がする。音質へのこだわりやアートワークへのこだわり、複合的な商品アイデアなどなど、やってみたい事は数えきれない。“便利グッズ”の部分は配信に任せるとして、ユーザー(=パトロン)が楽しめる“おもしろグッズ”や嗜好品を提供して行くのだ。


ダラダラと長過ぎるので今回はこの辺で。次回はこれからの配信の話。
かも。

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