2011/11/12

とりとめもない音楽ビジネスの話 #5

さて、久々の更新。相変わらずとりとめもないのでヒマな人だけどうぞ。


ここのところ、もうCDはあまり売れないという前提で音楽ビジネスを考えていたけれど、そろそろ、もう全くCDは作らないという前提で考えなければならない時期が近づいている気がする。想定はしていたことなのだけれど、スマートフォンを介したクラウドサービスを目の当たりにすると、CDという記録メディア自体がそろそろ終了なんじゃないかと思える。その内ノートPCのCD/DVDドライブはなくなって、CDを再生出来るハードなんて持っていなくて当たり前みたいな時代はすぐそこなんじゃないかと。


現在、世界一CDが売れている国はアメリカを抜いて日本だ。IFPI(国際レコード産業連盟)の統計によると、2010年の音楽産業の売上1位はアメリカで4168 百万USD、2位は日本の3959で、以下はぐっと差が開いてドイツ1412、イギリス1379、フランス866の順。(隣りの韓国は178。日本マーケットをターゲットとするのも頷ける。)その中で、パッケージ売上1位は日本で2,885百万USD、2位のアメリカは2,049。売上の割合が音楽配信に大きく移行しているアメリカに比べ、日本はまだそれなりにCDが売れ続けているわけだ。逆に言えば、配信の売上は期待程には伸びていない。


Napster Japanに勤務していた2007〜8年頃、サブスクリプションサービスは売上よりもプロモーション効果を期待されることが多かったけれど、世界的にみて今ではその売上分配率の低さに不満を持っている権利者も多い。(*現在はNapster Japanという会社はなくなっている。)CDがなくなる前提で言うと、ダウンロード販売とともに、サブスクリプションやその他のクラウドサービスでの売上に対する期待は膨らむ。特にCDが偏って売れていた日本では死活問題と捉えるべきかもしれない。日本国内でのアジャストにはやはりカタログ数が多く、海外本国の意思が反映されるグローバル・メジャー・レーベルの動きや考えが大きく影響する。この変革期に自分自身が実行者の一人で居たい想いは強いのだけれど、ことこの点については大きな組織の動きに期待している。


インディペンデントに行えることは、例えば新しい商品を作り出すこと。(この場合の商品はフィジカル、デジタル、それにモノより思い出だって含んじゃう。)アナログ盤+配信だったり、缶バッヂ型のMP3プレイヤーだったり、今も様々に趣向が凝らされているが、更に体験できる、コミュニケートできる、場合によっては制作過程を共有できる手法を取りながら、何かが圧倒的に突き抜けた作品を作ることが重要になると思う。


仮にサブスクリプションサービスの権利者への分配率が上がったり、その他のクラウドサービスにおける権利者への分配額が充分なものとなるとすると、メジャー・レーベルは(時にヒットの捏造まで含む)従来型のマス・プロモーションを継続することになるのだろうか。対してインディペンデントにやるべきは、よりソーシャルによりユニークに広げて行くことだろう。


現在こんな風に新しい音楽ビジネスを考えている人の中にはこれまで音楽業界に属していなかった人達も多い。しかし、ミュージシャンの志や、権利者の流儀、お客さんの反応などを肌で感じて知っている人でないとうまく進まないのがモノを売るだけじゃない音楽ビジネスの特徴でもある。システムだけはきっちり組んだのだけれど上手くいかないという失敗例は多く見受けられる。協業、協働をして行く事はこれからの鍵になりそうだけれど、経験と情熱を持って高いクオリティのものを作って行かなければ感動は生まれず、当然、感動の対価は得られない。


何しろこの変革期に、音楽をいかにしてマネタイズして行くかが難しいところなのだけれど、とはいえ、まだしばらくはCDを売るのがメインでしょう。笑 
まぁ本音を言えば、ゴチャゴチャ言わずに格好良いものを作りたいだけなのだけれど。

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